“美味しい”がみんなのハッピーをつくる。ナマガトーショコラのカカオ・トレースレポート
- 澤村 成美

- 2025年12月29日
- 読了時間: 13分
コートジボワール・サンペドロのカカオ農園を訪ねて
あなたが口にする甘いチョコレートが、誰かの未来を明るくする―。
そんな幸せの連鎖が続いたら、素敵だと思いませんか。
実は、ナマガトーショコラの美味しさの裏には、ベルギーの国際的な材料メーカー・ピュラトス社が手がけるサステナブル・プログラム「カカオ・トレース」があります。
私たちはそのパートナーとして、カカオ・トレース認証チョコレートを100%使用し、持続可能な未来づくりに取り組んでいます。
このプログラムでは、売上の一部がカカオ農家・生産者さんに還元される仕組みが採用されています。それだけではなく、栽培技術の支援や発酵施設の整備、医療施設や学校の建設など、地域の暮らしを支える活動にもつながっているのです。
“美味しい”を通して、みんながハッピーになれる未来を。
この記事では、カカオ・トレースの仕組みと、実際に訪れたカカオ農園で広がる取り組み、そしてナマガトーショコラの未来像を、レポート形式でご紹介していきます。

あなたの「美味しい」から始まるプログラム
“Great Taste Doing Good”
これは、ピュラトス社が掲げるカカオ・トレースのスローガンです。
「美味しいチョコレートを楽しむことが、そのまま生産者さんや環境を支える“良いこと”になる」―。そんな想いが込められたカカオ・トレースは、ピュラトス社、カカオ農家・生産者さん、そして私たち消費者がともに創り出すサステナブルなプログラムです。
このプログラムの特徴は、カカオ農家さんの「自立的な収入アップ」を目指していること。
単なる経済支援ではなく、栽培技術の向上や品質改善を通じて、自らの力で持続的に収入を得られるよう伴走しています。
現地では、「ポスト・ハーベスト・センター」を設置し、専門スタッフが発酵や乾燥を担うことで、豆の品質と価値を高めています。
技術指導によって他農園との差別化を図るほか、クオリティの高いカカオ豆には“プレミアム(上乗せ価格)”が付くこともあります。

カカオ・トレース認証のカカオには、出荷時に1kgあたり10セントの「チョコレート・ボーナス」がつきます。ボーナスは作り手や地域に還元され、実際、カカオ農村に新しい医療施設や学校、浄水施設を作るなどのインフラ整備にも活用されています。

豊かな味わいのチョコレート体験を楽しむことが、生産者さんの暮らしや、子どもたちの未来を支える。
あなたの「美味しい」から始まる、まさにWin-Winな取り組みです。
世界一!コートジボワールのカカオ生産量
豊かな熱帯の森と、広く大西洋に開かれた海岸をもつコートジボワールは、西アフリカに位置する世界有数のカカオ生産国です。私たちが日常で口にするチョコレートの原料の多くが、この場所から生まれています。
遠い国の農園が、身近なスイーツにつながっていると考えると、少し不思議な気がしますね。
コートジボワールでは、食用バナナやパーム油、カカオなどの生産が盛んです。国際カカオ機関(ICCO)によると、2024/2025年度(2024年10月〜2025年9月)のカカオ豆生産量は、前年度比10.5%増の185万トンに達する見込みで、世界最大規模の収穫量となります。
統計によると、カカオ豆の栽培面積はおよそ350万ヘクタール。その中心地のひとつが、港町サンペドロです。ここから世界中へ、チョコレートの原料が届けられています。
カカオの故郷、サンペドロへ行く
2025年5月下旬、ピュラトス社は、「カカオ・トレース」に関わる企業や団体とともに、カカオの故郷・コートジボワールを視察しました。
ナマガトーショコラ代表の柳下もその一員として参加し、首都アビジャンからバスで約3時間かけて現地へ向かいました。目的地は、世界最大のカカオ産地・サンペドロ。
窓の外には、どこまでも続く農園の姿が広がります。現地では、農園の視察や収穫体験をはじめ、カカオ・トレースの施設や、地域に整備された施設を巡りながら、農村の暮らしや現状課題に触れました。
“チョコレートの原点”を見つめ直す、学びと発見に満ちた5日間。
ここでは、その充実した体験を、ぎゅぎゅっと濃縮してご紹介します。

〜カカオ・トレースを体験する コートジボワール視察の旅程〜
日程 | 内容 | 主な出来事 |
|---|---|---|
1日目 | ドバイ経由で、いざサンペドロへ! | ・アビジャン到着後、バスで約3時間かけてサンペドロへ移動 ・道中に広がるパームプランテーションにおどろき ・登校する子どもたちと、働く子どもたちの姿 |
2日目 | サンペドロ滞在 | ・カカオ・トレースの勉強会に参加 ・栽培やプログラムの仕組みについて学び、グループで意見交換 |
3日目 | 農園視察 | ・カカオ農村の皆さんから歓迎を受け、歓迎の儀式を体験 ・収穫作業体験で、農園の現実に触れる |
4日目 | 契約農家・施設見学 | ・発酵・乾燥工程や品質チェックを視察 ・農村に整備された浄水設備・産院・ソーラーパネルなどの施設を見学 |
最終日 | 教育支援の現場へ | ・小学校を訪問。教師不足の課題や、教師用社宅整備の取り組みを確認 ・帰路へ。そして考える未来のこと |
カカオの生産過程をたどる
私たちが普段口にするチョコレートは、カカオ豆を焙煎して砕き、砂糖などを混ぜ合わせてつくられています。ナマガトーショコラの原料となるカカオ豆は、どのように収穫されているのでしょうか。実際に農園を訪れ、収穫を体験しました。
工程 | 内容 | 現地での体験・ポイント |
|---|---|---|
収穫 | ・熟したカカオポッド(実)を木から切り取る ・収穫の効率次第で差が出る | 大きな実を収穫し、オケに集めて運ぶ作業は重労働。自然環境の厳しさも実感 |
たたき割り | ・収穫したポッドを割り、カカオ豆を取り出す | 果肉は甘く、ジュースとして飲むと爽やかで美味しい! |
運搬 | ・取り出したカカオ豆を集める・発酵施設や農村の発酵場へ運ぶ | 大量の豆を運ぶ作業は重く、共同で行われる |
発酵(熟成) | ・木箱やバナナの葉を使い、約1週間で2段階の発酵を行う ・チョコレート特有の香りや風味が育まれる | 温度や時間の調整が品質を左右する。 |
乾燥 | ・発酵を終えた豆を天日干しで乾燥 ・水分量を下げ、保存性を高める | 村ごとに天日干しを行い、雨季には乾燥が難しい課題も |
販売・流通 | 契約農家から搬送センターへ 品質検査を経て、港から世界各地へ輸出 | 契約農家さんはカカオ・トレースの「チョコレート・ボーナス」を受け取る |
1日目:伝統の舞と歌に迎えられて
現地視察は、お世話になる各農村へのご挨拶から始まりました。村を訪れると、住民の方々が伝統的な儀式や歌、踊りで私たちを迎えてくれます。

この儀式の中で、村長からは「コラ」と呼ばれる赤い果実が差し出されました。強いえぐみと渋みをもつその実を噛むことは、歓迎と敬意のしるしだそうです。口いっぱいに広がる独特の風味…。この土地が大切にしてきた歴史や文化を感じたひとときでした。

また、別の農園では、伝統衣装に身を包んだ村の人たちが、太鼓の音に合わせて踊りながら出迎えてくれました。全身で喜びと誇りを表すその姿に、コミュニティの結束の強さを感じながらのスタートです。
2日目:実りの重さを知る、カカオ収穫体験

カカオがどのように栽培されているか、ご存知でしょうか。熟した黄色や赤色のカカオポッドは、木の枝に実ります。
ずっしりとした実をナタやハサミで枝から切り落とす瞬間は、迫力満点。一箇所に集めると、一帯がカラフルに彩られていきます。


地域の農家さんによっては、自給用に野菜や鶏も育てながら暮らしている様子が見られました。
収穫期は年2回(メインクロップ2〜7月、副収穫期10〜12月)あります。
地道で重労働な運搬
収穫したカカオポッドは、大きなオケに入れて、みんなで力を合わせて運びます。地面がでこぼこしているので、一輪車は使えそうにありません。5キロ以上にもなる重さは想像より大変で、日々の重労働を実感しました。
収穫したカカオがたまると、若手の農家さんやスタッフさんから「ジャギー!(やぎー)」と呼ばれ、頭に乗せた運搬作業を一人で10回以上繰り返しました。全身汗だくになってしまい、もうくたくたです。
その日の最後には、一番働いた人に選ばれ、みんなから拍手をいただきました。がんばってよかったです。

一気にたたき割る!
カカオポッドを一箇所に集めたあとは、ナタで豪快にたたき割ります。
白い果肉(カカオパルプ)に包まれたカカオ豆は、一見ふわふわに見えますが、取り出す作業はとても地道。最後は親指と中指の爪の間が内出血を起こしてしまいました…(泣)

希少なカカオの果汁
この日は特別に、バナナの葉の上にカカオパルプを重ねて置き、抽出された果汁を試飲させていただきました。甘くて美味しかったです。パルプは通常は発酵に使うため、ジュースとして飲むことはほとんどない、希少なドリンクです。

3日目:品質を決める、発酵と乾燥過程
収穫を終えたカカオは、自分の農園で発酵するケースと、ハーベストに持ち込んで発酵するケースがあります。
1週間で、2段階の発酵を行うのが基本工程。温度が上がって果肉が溶けていく中で、チョコレート特有の深い香りや味わいが育まれるのだそう。この時の温度や時間の調整が、チョコレートの品質を左右します。発酵を終えた豆は、太陽の下でじっくり天日干し。その中で、使用しにくい豆をピックしていきます。
自分たちで発酵(熟成)する
農園によっては、地面で乾燥させているところもあります。視察では、地域全体でカカオを育てている様子や、農園や農村による違いも見ることができました。
地域の発酵・熟成拠点「ハーベストプランテーション」に運ばれた豆は、そこのリソースを使って木箱やバナナの葉で覆い、約1週間かけて発酵します。菌の強い香りがします。
ポスト・ハーベストセンターで発酵(熟成)する
カカオ・トレースが整備した大きな「ポスト・ハーベストセンター」では、発酵と乾燥を行うことができます。ここではチョコレートの風味を左右する「発酵」の工程に着目した、独自のノウハウを導入しています。
専門家による発酵や乾燥の指導を受けることができる点が、特徴です。
専門家による農業計画支援
従来のカカオ農家さんは、伝統的な農法で育てているがゆえに、上手に収穫ができていない課題があるそうです。
効率的に栽培できれば1ヘクタールあたり2トン収穫できるそうですが、木々の植え方に規則性がないと、収穫ルートも非効率になり、その4分の1にまで収穫が減ってしまうそうです。計画的な農園づくりが、カカオ農家さんの収入を左右します。
品質テストで最終チェック
最後に、乾燥を終えたあとは100粒並べて品質をチェックする「カットテスト」が行われます。カカオ・トレースの品質を担保するための、重要な工程です。
販売・流通を経て、私たちのもとへ
品質チェックを経て、十分に乾いた豆は袋に詰められ、サンペドロ港へ運ばれていきます。ここから世界中へと出荷され、加工を経て、私たちが口にする甘いチョコレートへと姿を変えるのです。

4日目:農村に生まれたインフラ施設
カカオ・トレースでは、売り上げ利益を活用して、カカオ農村の暮らしに必要な産院施設や学校、浄水施設を建設しています。それらの施設を、現地で見学してきました。
産院施設|地域の母子を支える
各国の新生児・母子保健の統計をまとめている国際プラットフォーム「Healthy Newborn Network(HNN)」のデータ(2022年・2020年)によると、日本では1,000人に1人にも満たない新生児が亡くなる一方、コートジボワールでは約29人が命を落としています。
母体の死亡率も、日本の4人に対して480人と、およそ120倍の差があるといいます。
こうした命に関わる喫緊の課題に対し、地域で安心して出産や受診ができるよう、カカオ・トレースでは二つの産院施設を建設しました。施設にはワクチン保管用の冷蔵庫も導入され、母子の健康を支える環境が少しずつ整いつつあります。
一方で、「最寄りの産院まで50キロ以上離れていて利用できない」「等間隔で施設があればもっと助かる」といった声もあるそうです。今後は、こうした地域の声をもとに、新たな産院の増設も予定されています。

浄水施設|命を守るインフラ
母子をはじめとした地域住民が、安全な飲料水に安定してアクセスできることは、命を守るうえで欠かせないインフラです。
国際的な研究でも、清潔な水と衛生環境の整備が、母体死亡率や新生児死亡率の低下に直結することが示されています。
そうした中で、カカオ・トレースではこれまでに世界各地で70基の浄水施設を新設。
井戸や川の水を直接利用していた地域に、安全な飲料水を届ける取り組みを進めています。浄水施設には、ろ過装置や貯水タンク、太陽光発電を活用したポンプが導入され、地域の衛生環境の改善にもつながっています。
清潔な水があることで、病気の予防や出産・育児環境の改善にもつながり、暮らしの質そのものを支える基盤となっています。
これから建てる予定の、浄水設備の見学にもいきました。大人もこどもたちも同行することになり、どんどん大世帯に。みんなが関心を寄せて次々集まる姿に、人と人の心の距離の近さを感じました。
学校施設|現地で見た児童労働
また、カカオ・トレースで集められた還元金では、カカオ農村に学校校舎も建設しています。2024年までの間に16校が建設されました。

今回の視察では、そのうちの1校がある村へ見学に行ってきました。この村でも、住民の方々が伝統的な歌や踊りで私たちを迎えてくれました。

歓迎の印として、ストライプ模様の伝統衣装をいただき、「チェフバコー」というコートジボワールでの名前もいただくことができました。
笑い声があふれる時間に元気をもらった、忘れられないひとときとなりました。


村の中には、雨季には道路が冠水して交通が遮断されるなど、生活や流通を脅かす課題が残されています。これは、カカオの運搬・流通にも大きな支障をもたらします。村人からも、「まだ足りない」という声が聞かれました。
また、冠水によって、学校の先生が通勤できなかったり、子どもが学校に通えなかったりするなど、教育にも影響があるのだそう。現在は、カカオ・トレースのプログラムによって教師用社宅の整備が進められています。

学校の整備が進む一方で、教育の機会を得られず、農園で働く子どもの姿も道中で見かけました。カカオ・トレースの契約農家さんは児童労働を禁止していますが、カカオ生産地域全体を見ると、まだまだ無くなっていない現実があります。

5日目:そして、私たちにできること
今回の視察で改めて気づいたのは、課題の大きさと同時に、人々の力強さでした。
児童労働や農村間の格差、教育や医療をめぐるインフラ不足、解決すべき課題は数多くあります。けれど、現地の人たちは驚くほど前向きで、むしろ私たちが心の元気をもらう場面も多くありました。コミュニティが力を合わせて未来を切り拓こうとする姿勢は力強く、カカオ・トレースが確かに変化をもたらしていることを実感しました。
チョコレートの原点には、こうした暮らしや文化が脈々と受け継がれているのだなと実感し、今でもこの光景を思い出すと元気が出ます。
一朝一夕には解決できないからこそ、今の自分たちにできることを模索し、一つずつ形にしていく姿勢が欠かせないと実感しました。

ナマガトーショコラにできること。それはカカオ・トレースのパートナーとして、もっと多くの人に知ってもらうこと。そして、その背景にある農家さんたちの暮らしや取り組みを広く伝えること。それ自体が消費者と生産地をつなぐ大切な架け橋になると信じて、今できることから、取り組んでいきたいと考えています。
オリジナルの循環の仕組み目指して
さらに、将来的にはナマガトーショコラとして独自の仕組みを築き、カカオ農家さんへの還元のあり方をオリジナルで探っていきたいとも考えています。
例えば、教育支援や地域インフラへの投資といったニーズに応えながら、チョコレートを通じた「循環の仕組み」をつくること。それは、今回の旅で改めて確認できた大きな目標です。
農家さんへの還元の仕組みを模索し、教育や医療、暮らしを支えるためのオリジナルな活動も少しずつ形にしていきたい。今回の訪問で、その思いを一層強くする機会となりました。これからも、ガーナやベトナムなど他の生産地にも足を運び、現地の声に耳を傾けながら、その未来を広げていきます。
「美味しいチョコレートを届けること」が、地域の未来につながる―。
その確信を胸に、私たちはこれからも歩みを進めていきます。




























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